
糖尿病の検査について
糖尿病の検査について
糖尿病は初期にはほとんど自覚症状がありません。そのため、健康診断などの定期検査や偶然行った検査で初めて見つかることが多いです。 検査により発見されることが多い糖尿病ですが、1回の血糖値のみの測定だけでは、糖尿病と診断することはできません。糖尿病は持続的に血糖値が高い状態であることを確認する必用があるためです。 血糖値は測定するタイミングによって大きくことなります。 例えば、食後は血糖値が上がり、運動後は下がります。
正確には最後の食事から10時間以上経った状態で測定をした血糖値のことです。一般的には検査当日に朝食を抜いた状態で測定したものを指します。
食事とは無関係に測定した血糖値のことを指します。健康診断では、朝食前の空腹時血糖で検査を行うことが一般的です。ただし、初期の糖尿病では空腹時血糖は通常通りでも、食後の血糖値が急激に上がる「かくれ糖尿病」のケースもあるため、注意が必要です。
糖尿病の診断においてもう一つ重要な指標に、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)があります。血糖値は食事や運動により時間毎、日毎に変動しますが、HbA1cはそのような変動する血糖値の過去1~2か月の平均が反映される指標となります。直前の食時や運動の影響は無く、どのようなタイミングで測定しても値が変動しないため指標として安定しております。HbA1cと血糖値は採血により測定され、糖尿病の診断基準や治療効果の判定のために重要な検査となります。
1度の検査で上記のいずれかが確認された場合は「糖尿病型」と判定され、別日に再検査を行います。再検査でも異常があった場合、「糖尿病」と診断されます。 また、1度の検査のみでも、血糖値とHbA1c値がともに糖尿病型だった場合には、その時点で糖尿病の診断となります。
糖尿病の治療中、定期通院で確認する検査項目には以下のものがあります。
血糖値とHbA1cは定期的な検査としても用いられます。ただし、糖尿病の診断時とは異なり、HbA1cの一般的な目標は7.0%未満です。 HbA1c 7 % 未満を目指す際の血糖値の目安は空腹時血糖で 130 mg/dL未満、食後2時間血糖で 180 mg/dL未満程度が目安となります。
過去約2週間~1か月の血糖レベルの平均と、HbA1cと比べ比較的最近の状況を反映します。治療開始後すぐに効果を確認したい場合に測定します。また貧血をお持ちの方や透析治療をされている方はHbA1cよりもGAの方が正確に評価できる場合が多いです。
糖と一緒に排泄される1.5-AGという物質の血液中の濃度です。検査時から過去数日間の血糖レベルを反映します。 HbA1cやGAと異なり、血糖コントロールが悪い場合には低値になります。
尿中に含まれるブドウ糖を確認する検査です。一般的に血糖値が180mg/dLを超えると尿中へ糖が漏れ出しはじめ、尿糖陽性になります。 ただし尿糖が陰性だからといって血糖値が問題ないとは言えないので注意が必要です。 また、SGLT2阻害薬という種類の糖尿病治療薬は尿から糖を出すことで血糖値を下げる薬のため、この薬を飲んでいる方は尿糖陽性になります。
糖尿病は症状が乏しいため、気付かない間に進行し、全身の血管・臓器に影響を及ぼします。血糖値やHbA1cのコントロールが良好であっても、このような合併症は進行していく可能性があるため、あなたの命を守るためには合併症が進行していないかを確認する検査を定期的に行っていく必要があります。 当院では糖尿病の治療を継続していく中で、各種の合併症が進行していないかを確認するため、以下の検査を行っています。
糖尿病によって血管にどれだけ負担がかかっているか確認する検査です。 血管年齢(血管の硬さ)や下肢の動脈が狭くなっていないか、閉塞していないかを調べます。また、超音波診断装置を使用し、頸動脈の壁の厚さ(IMT)やプラークというコレステロールの塊がないかを調べます。
透析導入の原因疾患の第一位は糖尿病を原因とする糖尿病性腎症となっております。糖尿病によって腎臓がダメージを受けると、尿中にタンパク質が漏れ出るようになり、尿タンパク陽性になります。また尿タンパクの主成分である尿中アルブミンを測定することで糖尿病性腎症を早期に発見することができます。 糖尿病腎症が進行し、腎臓の機能が低下すると老廃物を尿として排泄することができなくなり、いつまでも血液中に留まってしまいます。老廃物が血液中に溜まっていないかを確認する検査項目として、血清クレアチニン、尿素窒素などがあります。
糖尿病によって末梢神経が障害されると、皮膚の感覚がにぶくなることにより、ちょっとした傷や火傷、痛みには気が付かない状態になります。最悪の場合、傷が治癒できない状態まで進行し、足を切断しなければならない状態に至ってしまうケースもあります。 腱反射のテストや感覚の検査といった手軽にできる検査によって早期に異常を見つけることができます。
糖尿病によって神経障害や動脈硬化が進行している人は、火傷や靴づれや小さい足の傷から感染を起こして足に潰瘍や壊疽を起こしてしまう場合があります。 足の状態の観察を行い、こまめにケアを行うこと(フットケアと言います)が非常に大切です。
糖尿病網膜症が進行していないかを確認するための検査です。 「ある日突然失明してしまう。」 糖尿病網膜症の進行状況は、眼科で眼底検査を行っていただかないと状況を確認することができません。初期の段階で網膜症を発見するために、また、ある程度進行してしまっても、失明のリスクを低減させる治療があるため、定期的に眼科を受診することは大切です。