糖尿病の食事療法と運動療法
糖尿病の食事療法と運動療法
糖尿病の治療において食事療法および運動療法は基本となる治療です。どのような薬剤を使用する場合でも、この2つの治療が適切でなければ、薬剤の十分な効果は期待できません。
糖尿病治療の最終的な目標は、単に血糖値を下げることだけではありません。高血糖によって引き起こされる、合併症(網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞など)の発症・進行を阻止し、健康寿命の増進とQOL(生活の質)を確保することにあります。そのための指標として、一般的に、1~2か月の血糖レベルの平均を反映した数値である「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」が用いられています。
| 目標 | 血糖正常化を目指す際の目標 | 合併症予防のための目標 | 治療強化が困難な際の目標 |
|---|---|---|---|
| HbA1cの値 | 6.0%未満 | 7.0%未満 | 8.0%未満 |
詳細は下記のページをご参照下さい。

食事療法は、極端な糖質制限や絶食を推奨するものではありません。個々の身長や体重、活動量に見合ったエネルギー量を摂取し、合併症の状態を勘案して栄養素をバランスよく摂取することが基本となります。
まずは、標準体重に基づいた「1日の適正摂取エネルギー量」を把握しましょう。以下の計算式が目安となります。
まず、以下の計算式で目標体重を出します。
目標体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22
※身長が180cmの方は、1.8mに換算する。
エネルギー摂取量(kcal)=目標体重(kg)×エネルギー係数(kcal)
※エネルギー係数は下記の表を参考にしてください。
| 身体活動量 | エネルギー係数 |
|---|---|
| 軽労作デスクワークが中心・主婦など | 25-30kcal |
| 普通の労作立ち仕事が多い職業 | 30-35kcal |
| 重い労作力仕事の多い職業 | 35kcal- |
※例えば、身長180cmでデスクワーク中心の一日の適正摂取エネルギー量は以下のように計算します。
1.8×1.8×22=71.28kg(標準体重)
71.28×25=1,782kcal
したがって、適正摂取エネルギー量は1,782kcalになります。
ただしご高齢の方の場合、筋肉量を落とさないことを目標に、適正摂取エネルギーが増える場合がありますので、必ず医師と相談しましょう。
三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)をバランスよく摂取することが求められます。特に炭水化物を極端に制限することは、医学的に推奨されない場合があるため注意が必要です。
朝食、昼食、夕食の3食以外に間食を摂取することは、消費エネルギーより、摂取エネルギーの方が多くなりやすく体重増加を招きやすいです。その結果、血糖コントロールも難しくなる大きな要因となります。原則としては控えることが望ましいですが、摂取する場合は適量を決めて上手な取り方を工夫することが重要です。
塩分の過剰摂取は血圧を高め、腎臓への負担も増やすため、合併症の進行を進める原因となります。
すでに糖尿病合併症を起こしている人は、それらの治療も含めた食事療法が必要になります。食事療法の基本は先述した内容と同じですが、合併症の種類により、食品・栄養素の摂取量がより制限されたメニューになります。
摂取カロリー全体の抑制に加え、飽和脂肪酸や糖分(砂糖・果糖など)を極力控える必要があります。また、食事からのコレステロール摂取量は一般的には1日300mg以下が1つの目安となりますが、高LDL血症の方は200mg未満に抑えることが推奨されており、患者様ひとりひとりのお体の状態にあわせて調整する必用があります。
塩分の摂りすぎは血圧上昇に直結するため、減塩が重要です。1日あたりの食塩摂取量を6g未満に抑えるよう心がけましょう。塩分の取り過ぎは心臓や腎臓にも負担がかかるので注意が必要です。
糖尿病腎症と診断されたり、腎機能の低下が見られたりする場合は、腎臓への負担を減らすために「たんぱく質」の摂取制限を行う必要があります。ただし、たんぱく質の摂取制限は筋力低下を助長する可能性もあるため、年齢・ライフステージも考慮する必用があります。

運動療法は、単にエネルギーを消費するだけが目的ではありません。有酸素運動により筋肉への血流が増えると、ブドウ糖が細胞に取り込まれやすくなります。また、継続的な運動によって筋肉量が増えると、インスリンの効きが良い体質へと変化します(インスリン抵抗性の改善)。ただし、運動をやめてしまうとその効果は3日程度で低下すると言われているため、「継続」することが何よりも重要です。
運動には大きく分けて2種類あります。
一般的には、中等度の強度(ややきついと感じる程度)の有酸素運動が推奨されています。
効果的にかつ安全に運動を行うための基準は以下の通りです。
強度
「ややきつい」と感じる程度、あるいは「少し汗ばむ程度」が推奨されます。激しすぎる運動はかえって血糖値を上げたり、身体への負担となる場合があります。
頻度
少なくとも週3日、できれば毎日行うことが理想的です。週に合計150分以上が目標です。
運動のタイミング
食後の血糖値が高くなる「食後1時間~2時間」の時間帯に行うと効果的です。
糖尿病の患者様が運動を行う際は、いくつか注意点や、運動を行ってはいけない場合があります。
低血糖の予防
薬物療法(インスリンやSU薬)を行っている方は、運動中に低血糖になる可能性があります。ブドウ糖や補食を携帯してください。
靴の選び方
足病変(潰瘍など)を防ぐため、足に合った履き慣れた靴を使用し、運動前後には足の観察を行ってください。
運動を行ってはいけない場合
合併症の状態によっては、運動がかえって病状を悪化させることがあります。以下に該当する場合は、自己判断で運動を始めず、必ず主治医に相談してください。
糖尿病の治療法は、患者さん一人ひとりのライフスタイルやお体の状態によっても異なります。そのため当院では、あなたの生活に合わせた適切な治療プランをご提案します。
どうすれば普段の生活の楽しみを残しつつ健康を守れるか、一緒に計画を立てていきましょう。
健診で数値を指摘された方、今の生活習慣に不安がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。